
記事:小野孝太郎(ライティング・ゼミ日曜コース)
「2つの心のバケツ」の話を聞いたことはありますか?
この話は私の心に深く刺さる内容でした。この話を知る前の5年間に経験した様々な人間関係の悩み、死にたくなった思いなどが全て説明できるものだったからです。
私はこの考え方が世界中に広まれば、世界平和に大きく近づくと思っています。
だから一人でも多くの人に知ってほしいと願い、この記事を書きます。
次のようなお話です。
心には2つのバケツがあります。
1つはキラキラ輝く黄金水のバケツ。もう一つはドロドロした泥水のバケツです。
嬉しい気持ちになると黄金水のバケツに水が入り、嫌な気持ちになると泥水のバケツに水が入ります。いつもニコニコ、ご機嫌そうな人はきっと黄金水がいっぱい入っているでしょう。
逆に不機嫌そうな人には泥水が沢山入っているかもしれません。
2つのバケツにはもう一つ特徴があります。バケツの水が溢れるとそばにいる人のバケツに水が入ります。黄金水が溢れれば黄金水が、泥水が溢れたら泥水が周りの人のバケツに入るのです。
では問題です!
・自分の黄金水のバケツを満たすにはどうしたら良いですか?
良かったら、考えてみてください。
今まで千人以上の人にこの問いをしてきました。
一番多い答えは「黄金水が溢れている人の近くに行く」でした。
次に多い答えは「嬉しくなることをする」でした。
三番目に多い答え、そしてこの話で一番のポイントになる答えは
「近くにいる人を喜ばせ、その人の黄金水のバケツを溢れさせる」
です。もしそうすれば溢れた水はそばにいる人……つまり自分に返ってくるわけです。
これは泥水にもあてはまります。誰かを嫌な気持ちにすれば、いずれ泥水が自分に返ってきます。
この話を読んで、それまでの5年間で私が経験した人生のどん底や、逆に大きな気づきや喜びを全て説明できると思いました。
私は2016年から2年間、小学校で教師をしました。どうしても公教育を経験したくてそれまで働いた会社を辞めて教師になったのです。
小学校の現場は覚悟していた以上に過酷でした。始めて3か月経った頃に正直死にたくなっていました。たぶん心のバケツはどちらも空っぽでした。子どもたちのために貢献したいという強い想いだけが命を繋ぎ止めていました。
子どもたちが楽しく学べるにはどうしたら良いか毎日頭を悩ませながら全力で授業の準備をしていました。でも、その想いとは裏腹に学級の状態がどんどん悪くなってしまったのです。子ども同士の喧嘩などのトラブルが頻繁に起こるようになってしまいました。
そんなある時、校長先生が次の問いかけをしてくれたのです。
「小野先生、明日転校生が来たとしますよね。その子に全部教えられますか?」と。
転校生が来たとしたら教えること。それは勉強だけではなく、学校に着いてから帰るまでの全ての手順です。下駄箱ではどこに靴を入れ、廊下はどこを歩き、教室に入ったら何をするか。宿題や連絡帳はどこに出すか。鉛筆は何本削ってくるか……等、全ての手順です。
そこで、自分で手順を書いてみました。でも、書けないのです。私自身が手順を知らなかった。子どもたちがそれでもやっているのは前年度の先生が教えたからです。そこで次の日、子どもたちの動きや号令のかけかたなどを観察して全て書き出してみました。
すると何が起こったか?
子どもたちが出来ていることが目に飛び込んでくるようになったのです。
今まで当たり前だと思っていたことが実はそうではない。有り難いことだった。子どもたちは習った手順を毎日頑張って遂行していたのです。
その日から私は子どもたちの動きを可能な限り言葉にして伝えるようにしました。
あたかも実況中継しているかのように。「○○さんが△△している!」のように。
変化は直ぐに起こりました。子ども同士のトラブルが劇的に減っていったのです。
私はそれまで大きな勘違いをしていました。
「どうしたら全ての子が勉強を楽しく分かるように教えられるだろう?」
という問いを持っていました。
でも、それ以前に最も大切に問わなければならなかったことは、
「どうしたら子どもたちの黄金水のバケツを満たせるか?」
だったのです。
人は誰もが黄金水が欲しい!
でも、もし黄金水が満たされないと、泥水でも欲しくなるものです。
憎まれ口を叩いたり、時には暴力を振るってでも他者の関心をひこうとする。きっと皆さんも思い当たる人がいるのではないでしょうか。
実はこれは学校だけで起こっているのではなく、社会の多くの場所で起こっていると私は思います。お客さんは大切にするのに、従業員を大切にしない。働いてくれている人に黄金水どころか泥水を入れてしまっている組織です。
働いている人の黄金水のバケツが満たされていなければ、その先にいるお客さんに心からの黄金水を届けられるはずがないと思うのです。
あなたが深く関わる人はあなたに黄金水を入れてくれていますか?
逆にあなたはあなたが関わる人に黄金水を入れてあげていますか?
もし、世界中の人が、相手によって区別せず、関わる人に絶対に黄金水を入れると決めたとしたら……世界平和は今この瞬間に達成できるのではないでしょうか。
良かったら、考えて欲しい問いがあります。
・あなたの身近にいる人(例えば、家族、友人、同僚、恋人、先輩、後輩、お店の店員さんなど)に黄金水を入れるために、あなたができることは何ですか?
・世界中の人の黄金水のバケツを満たすために、あなたができることは何ですか?
私は全ての人の黄金水のバケツが満たされた世界を作りたい。だから、これからも伝えていきます。良かったら皆さんも是非、大切な人に伝えてみてください。
※「2つの心のバケツ」の考え方は箱田忠昭さんの「『できる人』の聞き方&質問テクニック」という本で紹介されていました。より詳しくは書籍をご参照ください。
≪終わり≫
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