コーチング入門(6) コーチングの進め方の基本

コーチ・エィ・アカデミアでコーチングを学んでいた時、頻繁に「コーチング・エクササイズ」をしました。つまり誰か生徒がコーチ役、クライアント役となって実際に短時間のコーチングをするのです。他の生徒はオブザーバー役となります。しかし皆コーチング初心者で、何をどう進めて良いか分かりません。だから、コーチ・エィではコーチングの進め方の基本型として、「コーチングの基本フロー」というのを教えています。詳しくはコーチ・エィのこちらに記事があります。

私がコーチングをするときの典型的な流れを自分の言葉で書くなら以下の通りです。質問例はごく一部で、非常に奥が深いものなので、今回は深くは触れません。

セットアップ
 これからコーチングを始めますという合意とか、簡単な挨拶などです。
 質問例:これから30分のコーチングをしますがよろしいですか?

セッションの目的を明確にする
 そのセッションが終わった時にどのような状態になっていたいかをクライアントに尋ねることを通じて、クライアントが欲しい結果を明確にします。
 質問例:
  「今日はどんな時間にしたいですか?」
  「今日30分後にどのような状態になっていたいですか?」
  「今日の30分でどのような結果が欲しいですか?」
そう考えている背景や現状について尋ねる
 質問例:
  「今日はなぜそのテーマについて話したいと思ったのですか?」
  「◯◯さんにとってそのテーマはどのように重要ですか?」
  「その結果が得られた先にはどんな良いことがありそうですか?」
  「(そのテーマについて詳しく)お話いただけますか?」
  「今、話したいことを話せていますか?」(メタコミュニケーション・・どのステップでも適時尋ねる)
理想の状態について尋ねる
 質問例
  「本当はどうなっていたいですか?」
  「どうなっているのが理想ですか?」
理想と現状のギャップを埋めるために取りうる行動の選択肢を広げる
 質問例
  「そのためにどんなことができそうですか?」
  「他にありますか?」
今後の行動計画を立てる
 質問例
  「今日この後から早速してみようと思うことは何ですか?」
  「次のセッションまでに取り組んでみようと思うことは何ですか?」
セッションを振り返る
 質問例
  「ここまで話してみていかがでしたか?」

必ずしもこの流れになるわけではないのですが、全てのセッションで必ずしていることが一つあります。それは、「②セッションの目的を明確にする」です。

これをセッションの冒頭で明らかにしておかなければ、そのセッションが終わった時に目的が達成できたかどうか分かりません。目的がないただの会話になってしまうのです。

コーチ・エィ・アカデミアの講座では、沢山のコーチング・エクササイズで自分がコーチをしたり、クライアントになったり、オブザーバーとして他の人のコーチングの様子を聞いてきました。その経験を通じて感じた典型的な「うまくいかないセッション」があります。それは、このステップ、つまり「セッションの目的を明確にする」が疎かになったケースで、セッション中にみんな迷子になってしまうのです。セッションの目的が明確になっていない、つまり、向かいたい方向が分からないので、コーチとしても何の質問をして良いか分からなくなるし、クライアントも結局自分が何を話したいのか分からなくなり、オブザーバーとして聞いている人もどこに向かっているのか分かりようがありません。

セッションの目的は何か具体的なものである必要はありません。例えば、「とにかく今考えていることを聞いてもらいたい。話しながら、聞いてもらいながら考えを整理したい。」こんなのも立派な目的です。つまり、そんな場合の目的とは「考えを整理する」ことになります。そんなセッションの最後には、「今日は話したいことを話せましたか?考えは整理できましたか?今日話した結果何が得られましたか?」などの質問で振り返っても良いと思います。また、こんなセッションの時は特に、セッション中に「メタコミュニケーション」というものを入れます。メタコミュニケーションとは、例えば

「今話したいことを話せていますか?」
「ここまで話してみてどうですか?」

など、ちょっと話の本題から一旦離れて、今どんな状態かを尋ねてみるのです。

私自身いつも自分を戒めているのですが、うっかり自分の興味本位で聞きたいことを聞いてしまっていることがあります。目的は相手の背景にある価値観を知りたいなどの目的があり、それがダメというわけではないのですが、クライアントが話したいこととマッチしているかどうかは、本人に聞いてみれば良いのです。

さて、国際コーチング連盟はコーチングを以下のように定義しています。
コーチングとは、思考を刺激し続ける創造的なプロセスを通して、クライアントが自身の可能性を公私において最大化させるように、コーチとクライアントのパートナー関係を築くことです。
対話を重ね、クライアントに柔軟な思考と行動を促し、ゴールに向けて支援するコーチとクライアントとのパートナーシップを意味します。

上記太字にしたように、「ゴールに向けて支援するパートナーシップ」とあります。だからクライアントが求めるゴールとは何かを明確にすることが、コーチングを成立させるためには必要です。そして、私は「ゴール」をあえてゴールの上位概念としての「目的」という言葉で表現しました。

セッションの目的を明確にすれば、あとは心の底からクライアントに寄り添って話を聞き、気持ちよく話してもらうことに徹すれば、かなり高いレベルのコーチングができると思います。極端な話、下手な質問をするくらいなら、ずっと相槌だけで聞いていた方が良いセッションになる印象が私にはあります。典型的な問題は、コーチ自身がクライアントの話を聞きながら様々な自分の思考をしてしまったり、クライアントの問題解決をコーチがしようとしてしまうことです。これは私自身がクライアントとしてコーチングを受ける時に感じることでもあります。レベルがとても高いコーチは極端な話、質問なんて一つもしなくても気づきを与えてもらえる感覚があります。一方で、コーチ自身が思考してしまっていて意識が自分に向かっているコーチだと、私がクライアントのはずなのに、コーチが今何を考えているかの方に意識が向いてしまう感覚があるのです。そうならないように、コーチングをする際は自分の価値観は捨て、クライアントの世界観、そのクライアントの先に広がる無限の宇宙を全力で味わうことに徹することを私は心がけています。また、コーチとしてスキルを上げたかったら、自分よりも明らかにレベルが高いコーチのコーチングを受けたり、その在り方を間近で見ることが一番の近道だと思います。どんな風に聞いてもらえたら自分の魂が喜ぶのか、それを体験することで自分の在り方を見直すことができると思います。

以上。今日は、コーチングの進め方の基本ということで書きました。特に大切なのがポイントは「セッションの目的を明確にする」ということでした。これはコーチングに限らず組織での1on1ミーティングなどでも大切だと思います。


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