人の話しを聞く上で大切な心構えはこの「人を動かす」に様々な角度から書かれています。この本の原題は”How to win friends and influence people”、つまり、いかに友達をつくり影響力を発揮するかということです。普遍的に大切なことが書かれているから1937年の初版以来長年読み継がれて来たのだと思います。
この本には大きく
人を動かす三原則
人に好かれる六原則
人を説得する十二原則
人を変える九原則
が書かれています。そして一番最初に書かれている原則は以下の通りです。
批判も非難もしない。苦情も言わない
こうして言葉にするとシンプルですが、本当にこれが「できる」状態になるには、深い自己理解と、精神的な成長が必要だと私は考えており、実は「終わりのない旅」だと捉えています。
ではどうすれば良いのか。「批判も非難もしない。苦情も言わない」と心構えをいくらしていてもきっとできない場面が現れてしまいます。その場面をまず認識することが大事です。つまり、批判や非難をしようとしている自分、あるいは批判や非難をしてしまった自分を客観視するのです。
その場面ではすでに後で反省や後悔をするような言葉や態度を発してしまっているかもしれません。でも後からでも良いのでその場面に時計の針を戻し、その場で起こった事実や、それに伴い自分の心の中で起こったことを振り返ってみることをおすすめします。
その際にとても有効なのがNVC(Nonviolent Communication)の考え方のフレームワークです。それは、以下の4ステップで行います。
O: Observation(観察)
F: Feeling(感情)
N: Needs(ニーズ、価値観)
R: Request(要求)
OFNRのフレームワークで振り返るとはつまり、以下のように振り返ります。
O: その場面で起こった事実・観察(Observation)を振り返る
F: そのとき抱いた感情(Feeling)を振り返る
N: なぜその感情が沸き起こったのか?その背景にある自分のニーズや大切にしている価値観を探る
R: 本当はどうあってほしかったのかを振り返る
この枠組みで自分の感情の浮き沈みを俯瞰することによって、自己理解を深めていくことができます。どのような時に不快な感情をいだきやすいのか。どのような時に感情に振り回されて反応してしまう(大抵そのような反応は人間関係の問題を引き起こします)のかを知るのです。
こうして自分を理解できていれば、話しを聞くときの心構えができてきます。また心構えをしていても批判的な感情や不快な感情が沸き起こってくることがあるかもしれません。そんなときは、「成長できるチャンス」「自己理解を深めるチャンス」が来たと、感謝の気持ちで捉えるのです。目の前にいる人が自分を成長させてくれるありがたい存在だと受け止められるようになります。
このOFNRのフレームワークの考え方はとても強力です。ずっと以前に起こったことでも振り返ることができます。また自分と向き合うだけでなく、他者と関わるときにも相手の感情を慮ったり、その感情が沸き起こっている引き金になっているニーズを探ることができます。
自分がどのような時に不快な感情になったり批判的な態度になりやすいかを知っていれば、誰かの話しを聞く時に無意識に反応してしまうのを防ぐことができるようになってきます。無意識を意識化することで人は精神的に成長し、聞き手としても成長することができます。
コーチング入門・まとめ
①コーチング入門(1) コーチングとは
②コーチング入門(2) 対人関係でもっとも大切な心構え
③コーチング入門(3) 相手の話を聞く①
④コーチング入門(4) 相手の話を聞く②
⑤コーチング入門(5) 自己認識を深める①