リーダーは「器」を大きくするのではなく、中身を捨てる。

今日のポイント
人間関係を壊してしまう最大の要因は相手を否定してしまうこと。
まず相手のあるがままを受け容れるために、
自分の固定観念を取り払って、相手の話を理解することに集中する。
そのために、自分の「器」を空っぽにするイメージを持つ。

私がとても尊敬する経営者の一人、出口治明さんの座右の書「貞観政要」中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」の第一章が、

リーダーは「器」を大きくしようとせずに、中身を捨てなさい

となっています。様々なリーダーシップの本などで、「組織はトップの器の大きさで決まる」のように語られています。もう一人、私が大尊敬する稲盛和夫さんも盛和塾で明確に述べられています。しかし器を大きくしていくには長年に渡る日々の自己研鑽が必要で、とても荷が重いのではないでしょうか。そもそも大きくすることができるのでしょうか?そこで、この出口さんの考え方「器の中身を捨てる」です。これならば誰もが今日から、すぐにできるのではないでしょうか。

では器を空にするとはどういうことなのか?私なりの考え方は以下の通りです。

人は誰もが過去の体験を通じて、様々な価値感を築き上げてきます。価値感とは例えば、「〜は〜であるべきだ。」のように表現することができます。例えば、私がとても大切にしている価値感の一つは、

「誰に対しても等しく対等な立場で優しく接するべきだ」

です。このようにとても大切にしている価値感もあれば、他にも無数の価値感を誰もが持っています。

人と関わる時に、この価値感のフィルターを介して相手を見てしまうと、違和感を感じることがあります。つまり、自分の価値感と反するようなことを相手が言った場合です。そしてその違和感をそのまま口にしてしまったり表情に出すことによって、相手との関係性を悪くしてしまうのです。

では、どうすれば良いのか?

相手のあるがままを受け容れるために、私は以下のような事を心がけています。

相手と自分の間に「真っ白な紙」を仮想的に置く。
相手の話を聴いたり、相手の在り方を見た結果を、
その「真っ白な紙」に書き出していくイメージを持つ。

このように考えると、自分の価値感のフィルターを通さずに、一旦、相手のあるがままを受け止めることができます。コミュニケーションで問題が生じるのは相手を頭ごなしに否定してしまうことです。言葉にしなくても、心の中で感じただけで、その気持ちは相手に伝わります。それは逆の立場になれば、分かるのではないでしょうか。目の前の人が、自分が言っていることを受け止めてくれてないというのは相手を良く見ていれば分かるものです。

「真っ白な紙」をイメージすることで、この問題が起きるのを防ぐことができます。

そして、「なるほど、あなたはこう考えているんですね。」と受け容れる。良く分からないところは質問する。

このように相手を理解しようとすれば、相手は自分のことを分かろうとしてくれると感じるのではないでしょうか。そしてこのようなコミュニケーションには実は自分にとっても学びしかないのです。相手がどのように考えているのか。何を大切にしているのか。そんな事を知ることができるのは自分の思考の幅を広げ、世界の見方を変え、それこそ「器」を大きくしてくれます。

私は実際、コーチングをする時はもちろん、そうではないときでも人と関わる際にはこの考え方をいつも意識しています。

相手の考えを否定せず、ただあるがままを理解しようとする。

これが、出口さんがおっしゃられる「器の中身を捨てる」の意味だと私は捉えています。

私がこの「真っ白な紙」の効果を感じたのは5年前。ある小学生のチューター(家庭教師)をした時です。初めて出会ったとき、彼は私と目を合わさず、一言も話してくれませんでした。そこで次に会うとき、スケッチブックとクレヨンなどを持っていき、そこに好きに絵を描いてもらいました。彼は好きに描き始め、彼の様々な想いを絵にして伝えてくれました。彼が絵を描いている様子をただ見守るうちに、彼はポツポツと言葉も発するようになりました。何度か繰り返していくうちに心を開いてくれて、最後はいっぱいおしゃべりをする仲になりました。

これは相手が大人でも同じだと思うのです。相手のあるがままをまずはただ受け止める。そんなことができる人が「心が強くて優しいリーダー」だと私は考えています。

これは自分の意見を言ってはいけないということではありません。相手と意見が違っても良い。意見が違った場合のコミュニケーションの仕方はまたそれだけで大きなテーマなのでまた別の機会に書きたいと思います。

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